第6章 マグネット
大野side
鮫島ホテルズ豊洲に着くと、まっすぐにレストラン五助に向かう。
「あ、あの…大野さん…」
「大丈夫。個室とってあるから」
入口で名前を告げると、まっすぐに個室に案内された。
「こんな高い所…」
「いいって、松本くんより給料貰ってるから。これでも課長だぜ?」
そう言うと、松本くんは少し笑ってくれた。
席につくと、頼んでおいたフレンチのコースが自動的に出てくる。
松本くんの好みはリサーチ済みだ。
パクチーとか辛いのがなければ大丈夫。
…営業の経験がこんなところで役に立つとは…
「あのな…松本くん…」
コースも食べ終わり、白ワインを二人で静かに飲んでいる。
言わなきゃと思いながら、なかなか言えなかった言葉を口にした。
「実は俺、この一週間松本くんを避けていた。ごめん」
「えっ…」
「櫻井くんから…君の縁談の話を聞いてしまって…」
「僕の…?え?何の話ですか!?」
「部長のお嬢さんが…君のこと、とても気に入っていて、部長も君のことを高く評価していて…」
松本くんは呆然とした顔をしている。
言わなきゃ…ここで言わないでどうする。
好きだ…
って、まだ言えないっ…