第6章 マグネット
大野side
自分勝手だとは思ったけど…今更だとは思ったけど…
どうしても松本くんの昇進を祝いたくて。
ネットでホテルを探して、いいところがあったからディナーを予約して。
ついでに…
「Julie!Is this true?」
「いえーす、オオノサーン」
「だ、だって!ドーター…娘さんの結婚は!?」
「オー…ホントは日本のイケメン持ち帰りたかったデスね~」
「へ…?じゃあナシになったの?」
「いえーす…まいどーたー悲しみせにょりーたネ~」
ちらっと櫻井くんを見ると、タブレットを見ながら呆然としている。
お前も知らなかったのか…
今回の辞令で、部長はアメリカ本社に帰ることになったのだ。
だから、部長のジュリーの娘と松本くんの話は、始まってもいないのに終わったのだ。
「オーノサン、それより、ユーはなんでマネージャーの試験受けませんでしたか?」
「どうでもいいから!」
「OH…NO…」
だから…
松本くんにちゃんと告白しようと決心した。
断られるかもしれない…急にあんな態度取って…
でもそれも正直に言おう、そして俺の気持ちも伝えようと思った。
震える指で、部屋の予約のボタンを押した。