第6章 マグネット
大野side
身体がだる重い。
5課の扉を開けようとしたら、私用のスマホがピコンと鳴った。
中に入りながら見ると松本くんからで…
「合格したんだ…」
誰もいない松本くんの席を眺めながら、どうしようもない苛立ちに囚われる。
返事を打たないままスマホをスーツの懐に仕舞って、パソコンを開く。
メールボックスには松本くんの合格を知らせるメールが本社から届いていた。
評価はトップクラス…部長が気に入るわけだよ…
それから一週間、俺は松本くんに話しかけることもできなかった。
松本くんは不安げな顔で俺のことずっと見てる。
けど、俺にはどうしていいのかわからなくなっていた。
次の月曜の課長会議の前に会議室でメールボックスを確認していたら、辞令が来ていた。
真っ先に松本くんを探したら、営業5課係長に昇進していた。
配置換えにならなかったことに安心して他の辞令を確認する。
「えっ…」
その時会議室に部長が入ってきた。
「Julie!Is this true?」
辞令の画面を見せながら言うと、部長は微笑んだ。
「いえーす、オオノサーン」
それは、部長が本社に転勤するという辞令だった。