第6章 マグネット
松本side
断われたと言ったのに、大野さんは浮かない顔のまま帰っていった
風邪も心配だけど
それ以上になんともいえない不安が沸き上がってきて
大野さんが帰った後のリビングで暫くただ座っていた
大野さん…俺、信じてていいんですよね…?
月曜日、出社すると本社からメールが届いていた
開いてみると、先月受けた昇格試験の結果で
無事に合格していた
「ふぅ…」
思わず安堵の息を吐いた
大野さんのおかげでそこそこ自信はあったけど
やっぱり多少不安だったから
この試験は、俺にとってただの昇格試験じゃなくて
大野さんに教えてもらったんだから、結果もきちんと出したかったし
なにより、大野さんに近づける1歩だったから
きっと大野さんのところにもメールはいってるだろうけど
早く知らせたくて、改めてお礼が言いたくて
トイレに行って携帯を取り出した
“試験、無事受かりました。勉強付き合ってくれてありがとうございました”
それだけ送って、デスクに戻った