第6章 マグネット
大野side
「櫻井くんと話してきた」
ゴクっと松本くんが唾を飲み込んだ。
俺はルノアールでの話を思い出した。
「いいの?帰って…」
「なんだよ?」
「大野の好きな人って…松本だろ?」
「なっ…なんでだよっ」
「お前が部下を飲みに誘ったりすんのおかしいもん」
「いつ見たんだよ!?」
「珍しいこともあるって、二宮くんが1課きて相葉くんに言ってたのを聞いた」
「あの野郎…」
「あのなあ…松本くんは部長のお嬢さんに気に入られてんだよ。部長も乗り気だ」
「へ?」
「手ぇだしたら、どうなるかわかってんの?」
「どうなるって…」
「だからさ、俺と付き合ったほうが身のためだよ?」
「別に俺はどうだって…」
「松本のためでもある」
…あんなこと言われたらさ…
「きちんと断ることができたよ…ありがとうな」
「そう、ですか…」
微笑んで下を向いてしまった松本くんを抱きしめたい。
でも…
「…じゃあ、帰るよ…」
「ちょ、待ってください!風邪薬っ…」
「大丈夫だよ。ありがとな」
松本くんのためって言われると、俺、どうしようもできねえよ…