第6章 マグネット
大野side
「な、なに言ってんだよ!」
「え?好きって言ってんの」
「う、嘘つけっ!」
「嘘じゃないよ…俺、同期入社したときから好きなんだぜ?大野くん、鈍いからちっとも気づかないのな」
「にぶ…」
「俺と付き合ってくんねえ?」
「なっ…なんで急にっ」
「…だって、大野くん好きな奴できたろ?」
櫻井くんはすごく悪い顔して笑ってる。
俺は櫻井くんの腕を振りほどくと、逃げるようにその場を離れた。
松本くんを追いかけたけど、もう居なくて…
その日は一日気もそぞろで、外回りをした。
夕方になって社に戻ったら、松本くんは直帰すると連絡があったと言われた。
すぐにトイレに篭って緑のアイコンをタップした。
”今日家に行っていい?”
そわそわして返事を待っていたら…
”遅くなるからダメです”
”何時でもいいから”
”ダメったらダメです”
”お願い松本くん”
”嫌です”
”家の前で待ってる”
「大野さん!いつまでクソしてんですか!」
外から二宮くんの声が聞こえた。
それには構わず個室を飛び出して、オフィスでカバンを取ると、まっすぐ松本くんの家へ向かった。
背中に定時の音楽を聞きながら。