第6章 マグネット
松本side
「さむ…っ」
夏生まれの俺には冬の寒さはつらい
できればなるべく外になんて出たくないけど
12月に入って暮れがやってくる中
そんなことなんて言ってられなくて
今年お世話になったところに
挨拶に行こうとカレンダーを車まで運んでいたとき
偶然…
エントランスに大野さんと櫻井課長がいた
櫻井課長は大野さんに抱きつくように腕を回している
思わず大野さんの方に向かいそうになった足を堪えた
…勝手に俺が両想いかも、なんて思ってただけだ
俺には何かを言う権利なんてない…
大野さんと目が合ったけど…
大野さんが何かを言っていたけど…
気にしてないフリをして車に向かった
「はぁー……」
車に乗り込んで深く息を吐く
俺に…キス、したくせに…
俺を抱き締めてくれたのに…
「あ…そういえば、昇格試験の結果…もうすぐだ…」
ぐるぐるする思考を振り払いたくて
全然違うことを呟いてみたけど
さっきの大野さんと櫻井課長は頭から消えてくれなかった