第6章 神様なんか、いない
見た目に、松岡先輩は変わっていた...
世間一般に言えば、『不良』と言うのかな?
ちょっと知らないと、
怖くて近付けない感じだけど、
でも、俺のこと、守ってくれるって...
先輩はそう言った。
...不良になった先輩が、俺を守る...
『俺たちの仲間になれ』先輩はそうも言った。
不良の仲間になる...
俺も...『不良』になる、ということか?
そんなこと、俺にできるのかな...?
でも...
どうせ、こんな俺にはみんな近づいて来やしない...
大人しくしてれば、興味本位に見られて、揶揄われるのが落ちだろう...だったら...
俺が、不良の仲間になったら、
家族は悲しむかもしれないけど...
どうせ、今だって、これ以上ないくらいに悲しませてるんだ...
今更、俺がどんな風になろうが、構いやしないだろう。
寧ろ、学校へ行ってくれた方が、
ホッとするかもしれない...
毎日、家にいられて、母さんだってきっと、
もう、うんざりしてるんだろうから...
...もう俺に、失うものなんか、
何もないんだ///
この世に、
神様なんかいなかった...
俺のこと、助けてくれなかった...
毎日、出口を探して、暗闇の中を、
藻掻き苦しむ俺のこと...
神様は、何もしてくれない...
だったら。
差し出された手を、掴んでみよう...
その手が、
例え悪魔の手だったとしても...
正解なのか?そうでないのか?
そんなことは分からない。
何も出来ないでいるよりは...
きっと、何か見えるはず...
俺は、昼間貰った紙を開いて、
松岡先輩に電話を掛けた。