第4章 もがき苦しむ中で
【 翔side 】
僕等は、中学生になった。
でもそこには、
大好きだった、大切だった友達が
いなかった。
僕のこと、大好きだよ、
ってそう言ってくれた仲間は、
いなかった。
僕を除く4人は、公立の中学校に行った。
僕は、受験をして、
俗に言う、有名進学校、と言われるところに
入学した。
受験は簡単だった。
その頃はもう、僕の名前は、
全国の模試でも当たり前に上位にいたし、
有名大学に、たくさん進学している、
その中学は、男子校で、
がむしゃらに勉強してきた、
そんな奴ばっかりで...
どこを見回しても...
真っ暗に見えた。
桜舞う4月、晴れの入学式なのに、
中学受験と戦ってきた12歳の少年たちは、
疲れたように背中を丸めていた。
...僕も、こんな風なんだな...
激戦を戦い抜いて、
勝ち取った誇らしい、すがすがしい顔は、
みんな下を向いていた。
...これから、ここで、
生きてくんだな...
「ふう~...」
僕は周りに聞こえないように、
小さなため息をついた。
一見すると、優秀で、
勉強を頑張る、テストも模試も、
抜群の成績で、
父親は、満足だったのかもしれない。
息子が、確実に自分の後を継いで、
医者になってくれるだろうってことが...
...僕は、正直そんなの、
どうでもよかった。
ただ、父にはむかって、無駄に争って、
母親を泣かせたくなかっただけなのかも...
何にも考えずに、
友達と夢中で遊んだ幼い頃が、
もうずっと過去の過去とのような、
そんな気がしていた。