第21章 旅立ち 〜departure〜
【雅紀side】
翔は卒業試験にも、勿論国家試験にも、
一発どころか、余裕で合格した。
いよいよ卒業式の朝。
残念ながら、俺は夜勤で翔を見送りできなかった。
『いってらっしゃい』そうLINEをすると。
ガッツポーズのスタンプと、
スーツ姿の自撮り写メが送られて来た。
「...ふふ、翔...やっぱかっこいいな~」
俺はひとり翔の晴れ姿にちゅうをしてトイレの個室を出た。
...サボってた訳じゃないからね?
まあ、う〇こしてたわけでもないけどさ...
俺は、就職して3年目に入ろうとしていた。
始めから、小児科の病棟に配属になり、仕事にも同僚にも何とか慣れてきた。
始めのうちは、毎日緊張で体重も3㎏減った。
翔はそれを心配して、外食に連れて行ってくれたりした。自分だってインターンになって大変なのに...
同じ病院だけど、翔はインターンの最後は、外科の外来にいたから、
いつも一緒と言う訳にはいかなかったけど。
時間が合えば、一緒に食堂でランチしたりした。
白衣が身についてきた翔は、病院の中で誰よりもカッコよかった。
...正直さ。
翔の周りには、所謂『白衣の天使』たちが入れ代わり立ち代わり寄ってきていた。
まあ、俺も同じ立場とはいえ、『天使』からは程遠いし、内心気が気じゃなかった。
...ほら、来た。
「櫻井先生、これ、よかったら食べて~♪夕べ作り過ぎちゃって~」
俺といるのに、全く目に入ってないという感じのそのナースは、リボンで縛った袋を翔に差し出した。
「ありがと、忙しいのに...すごいね~」
「好きなの♪お菓子作るの...」
...何言ってんだよ..翔にやるために作ったくせに。
受け取ってもらって、その子は嬉しそうに行ってしまった。