第20章 卒業~Graduation~
吸い寄せられそうで......
あと少しで唇が重なる、っというその時、
俺は我に返った。
「やめろよ///」
慌てて彼女の肩を押して顔を背けた。
俺から離れ、悲しそうな顔をして俯く遠藤...
「こんなこと...しない方がいい...」
そう言うと彼女は、
「翔くんのことが好きなの!」
と言った。
真剣な彼女の告白を、俺はどうしてやることもできないんだ。
「...遠藤...俺は、他のヤツじゃ...ダメなんだよ...雅紀じゃなきゃ...」
「変だよ!そんなの...翔くんほどの人がさ...そんな...男なんかと...」
「...何と言われても、どんな風に思われても、構わない...俺は、雅紀とのこと、恥ずかしいと思ったこともないし、雅紀がいなくちゃ、生きていけないんだ...」
「......翔くん...」
「遠藤...俺のことはどう思ってもいい。軽蔑したってかまわないよ...でも、雅紀のことを悪く言わないで欲しい...」
......遠藤は涙を溜めて俺のことを見ていた。
「...君とは、いい友達だって思っていたけど...もう、戻れないのかもしれないね...ごめん...俺、帰るよ...」
俺は、遠藤を残して会計を済ませ店を出た。
色んな気持ちが、ぐちゃぐちゃで...
考えがまとまらないけど、
一瞬でも彼女の誘惑に負けそうになったことが、腹立たしかった。
遠藤がじゃない...
直ぐに毅然とした態度をとれなかった自分自身に...
......雅紀...ごめん...
ほんの少しでも、揺らいでしまったこと。
それは、否定できないから...
自分でも分かんなかった。
マンションに帰り着いたときは、
10時を少し回っていた。
俺は何もできず、ソファに沈んだ。