第20章 卒業~Graduation~
【 雅紀side 】
俺は翔よりも先に卒業する。
国家試験にも何とか合格し、大学病院への就職も決まっていた。
卒業式さえ終われば、これで俺も社会人としての
一歩を踏み出すことになる。
実習も俺なりにではあるけど、一生懸命にやった。翔が卒業するまで、先に現場で足場を固めとく。
少しでも翔がやり易いように。
働きやすいように。
強いて言うなら、遠足の下見に行く小学校の先生的な役割で。
「ほら、雅紀..肩に力入り過ぎ..」
翔は笑って俺の肩を叩いた。
「えっ?あ...うん」
「かっこいいよ...雅紀。ヤバいくらい」
翔が、俺のスーツ姿を、目を細めて見ている。
スーツも翔が見立ててくれて、自分なりに奮発して買った。
「...こうかな~?これで...どう?」
翔が曲がったネクタイを直してくれた。
そう。
今日は俺の卒業式。
いいって言ったのに、両親も来るっていうから。
「俺はいけないけど...頑張ってね!!」
「うん...まあ、頑張ることも特にはないけどさ」
玄関先まで、翔が見送りに出てくれた。
「いってきます!」
「あ、待って!!忘れ物..」
そう言いながら、近付いてきて、そっとキスをした。
ちゅって軽い音だけ立てて離れていくそれを追って、俺は翔の頭を引き寄せて唇を重ねた。
「...んんっ...」
反動で開いた唇に、すぐさま舌を捻じ込むと、翔の顔は少し苦しそうに歪んだけど。
すぐに俺の舌を受け入れて絡めてきた。
玄関に、朝から響く卑猥な水音...
翔から漏れる声が、甘く艶を帯びてきたのを切っ掛けに、俺はそっと彼を放した。
恨みがましい目をして俺を見ている翔に、
「続きは今夜帰ったらね♥」とウインクした。
「ばかっ...」
翔は真っ赤になった。