第10章 大人の階段昇る
【 翔side 】
俺は、高校3年生になった。
遅れていた勉強も取り戻し、
将来の夢に向かって......
と言いたいところだけど。
「櫻井、学部は決まったのか?
お前ならどこでも行けるとは思うけど、
目標が定まった方がな...」
担任の先生が、何度目かの進路相談でそう話した。
「分かってます...」
「今度は親も入れての面談になるから、
職業はともかく、進学したい学部だけでも決めてこいよ。まあ、櫻井は、医学部でいいんじゃないのか~?」
「...考えてきます...」
漠然と考えていた将来の夢。
夢......
俺にとっての夢って、何だろう...
その日の帰りは、雅紀と待ち合わせしていた。
本屋で参考書を見ていると、
「翔!待った~?」
笑顔の雅紀が俺の肩を叩いた。
「うんん、俺も今来たとこだよ」
「なんか、買うの?」
「...いやっ、いいや..行こうか」
俺たちは、相変わらずの関係を続けていた。
時々こうやって会って、ご飯に行ったり、
休みの日に図書館に行ったりしていた。
「今日はどうしよっか?」
俺がそう言うと、雅紀は少し言いにくそうに、
「今日さ、俺んち留守なんだよね...
よかったら、飯買って、うちで食べようか?」
...雅紀の家?...留守って...
俺が雅紀の顔を見ていると、彼は慌てて、
「いやなら、いいんだ...って言うか、ちょっと言ってみただけだしさ...別に特に..」
焦る雅紀が可愛くて、俺は雅紀の手を握って言った。
「いいよ、そうしよう...雅紀の部屋、久々だな~」
雅紀は、驚いたように俺を見ていたけど、
「うん...じゃあ、行こっか♪」
と笑った。