第1章 はじめまして太陽さん
まぁ、千歳くんが学校に来ないことは、私に関係ない………わけでもなかった。
「あ!千歳くん!」
日向さんが声をかけた先に、千歳くんがいた。
「おはよう。」
そう言って笑う彼。
千歳くんを見て、日向さんはちょっと嬉しそうに顔を赤らめた。
(おぉ~…これは〜…?)
うん。そういうことかも…
日向さんは千歳くんのこと気になってるのかな…?
HRが終わると、前の席のお二人さんは仲良さげに話していた。
そして1時間目の授業が始まるんだけど…
千歳くんでかい。
黒板の端の方とか全然見えない。
そう、これが千歳くんが学校来るか来ないかで決まる私と黒板との向き合い方。
(まぁ休み時間、日菜子に見せて貰えばえぇか…)
その分、黒板の見える部分を一生懸命板書した。
キーンコーンカーンコーン…
1時間目が終わったので、日菜子にノートを借りに行こうと立ち上がった時だった。
「あ、ちょっとよか?」
前に目を向けると、千歳くんが私の方を見ていた。
『あ…うん…』
初めて声をかけられたことに驚きながら、私は自分の席についた。
「黒板の端の方、見えたと?」
『え、あ、うん…大丈夫やで…』
「ほんなこつ?」
(ん…?……ほんな、こつ…??え…??)
『え、えーと…?』
あたふたしていた私に気づいてくれたのか、千歳くんが口を開いた。
「あ、えっと…ほんとうに?って意味たい。」
『あ、なるほど…
じ、実はちょっと見えなかったところも…』
「やっぱり。それじゃ、はい。これ俺のノート。」
最初はノートがどうしたと思っていた私だったが、しばらくして千歳くんはノートを私に貸してくれるのだと気がついた。
『え…?でも…』
「遠慮しなくてよか。」
そう言って千歳くんはノートを私に差し出してニコッと笑った。
『お、おおきに…』
「うん。」
そう言って千歳くんはふらりと鞄を持って教室から出ていった。
この日、次の授業から、千歳くんはクラスに戻ってこなかった。