第6章 まずは触れてから考えよう2(コムイ)
再び視線が合わされば自然と唇が重なった。
今まで何度かしてきたソレとも違う。気持ちが通じ合ったあとのキスってこんなにも気持ちいいものなのかとぼんやりと考えてしまう。
絡み合う舌の温度が徐々に溶け合い、感覚がじりじりと麻痺していく。
いつの間にかお互いの背に手を回し、埋められたその隙間から鼓動を交換している様で、ドクドクと鳴る振動がどちらのものかはわからない。
背に回された室長の手が下におり、静かに腰を撫でてくる。
「…っ」
くすぐったいようなその感覚に身じろぎをするが、余計に大きくなぞられるだけで止まる気配はない。
きっと、コレは合図だ。
応えるように、背を抱く腕に力を入れた。
室長のはく息が、耳をぞわりとかすめる。
「…沙優くん、」
部屋に…
と室長が口を開いたところでゴゴゴと地響きがなり、足場がグラリと短く揺れた。
「えっ?!」
慌てて2人で建物に寄り、その場でしゃがむ。
「……まだ揺れてる?」
「いや…もう大丈夫かと…」
ちらりと隣を見れば室長と目が合う。
座っているせいでいつもは遠い顔がすぐ近くにあることに、毎度飽きずに私の胸は喜びを上げた。
正直、このままさっきの続きといきたいところだが、きっと揺れの原因たちはソレどころではないだろう。
「室長…コレ…もしかしなくても…」
「待ってちょっと…えぇ〜…」
はぁ〜と深いため息をつきながらこちらの肩に顔を埋める室長の背中をポンポンと叩いてあやすと、眉間にシワを寄せ、覆いかぶさるように近づいてくる。
「……気づかなかったフリしたらダメかな?」
「2人とも行かないのはあからさますぎません?」
「だよねぇ…」
室長は再びため息をつくと、立ち上がってこちらに手を差し伸べてくれる。
手をとって立ち上がればダンスのように向かい合った。
「…じゃあ、最後にコレだけ。」
掴んだ手は離されることはなく、室長の両手で優しく包まれる。
「僕とお付き合いしてください。」
優しくこちらに向けられる笑みを、ひどく愛おしいと思った。
「こちらこそ。お願いします。」
顔が、耳が、かぁっと熱くなるのを感じたところで、何度目かわからないキスをされた。
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