第6章 まずは触れてから考えよう2(コムイ)
パタンと閉じたドアを見つめる。
「はぁー…」
本当に、ラビの言う通りタイミングのせいだろうか。
そんなことが頭を巡って、でもそれよりも彼女のことが好きなのかと聞かれなくて良かった。
きっと、うまくごまかせないから。
もうほとんど暴露したようなものだけど、それを声に出す勇気はない。
今まで、ここまで膨れたことのない想いだから
今まで考えないようにしてきた想いだから
声に出したらきっと止められなくなる。
彼女に、愛してほしいと、思ってしまう。
部屋に閉じ込められたあの日から、手を伸ばしてしまったあの時から、きっと彼女を好きになった。
僕らは互いの気持ちを聞かない。
2人きりの時、どちらかが腕を開けばそれを受け入れる。
人の前で弱音を吐くのは、気持ちを吐露するのは、彼女であっても憚れる。この役職に就いた時、己の決断は多くの命を動かしているのだと覚悟した。
だからこそ、理由を問われることなく、ただただ甘えられる彼女の存在にとても癒された。
触れるたびにこれは僕だけのものにしたいと思うようになった。
いっそ、まっさらな関係で気づけたら告白できたかもしれない。
だが散々触れている今となっては、白黒のつかない灰色な気持ちで触れ合う今では、告白して僕だけが気持ちがある場合、彼女はどうするだろうか。
すっぱり振られて、今の関係がなくなってしまうのは怖くて嫌だし、彼女はとくに好きでもなんでもないのに僕ばかりの気持ちが膨らんでしまうのはもっと怖いし嫌だ。
「何してたんだか」
こんな歳にもなって
わかってる。
僕が悪い。
僕から始まったんだ。
息が詰まりそうだから、他のことを考えようと少し頭を回せば、ラビの顔がポンと浮かぶ。
…そもそもさっきの彼は何をしに来たんだろう。
まだいるかな?とドアを開け、ラボを見渡せば、無意識にも彼女の席へ目が向いて、ちょうどそこに赤毛が目に入る。
「?」
もう1人、見慣れない男がそこにいた。
確か彼は通信部の子だ。