第5章 いつもの(神田)
「ふ……っかつ!!」
腕を高らかにあげガッツポーズ。
おはようございます!と大きく挨拶すればおかえり〜と温かい声に迎えられる。
戻ってきましたよ神田さん。
勝手に作っていたイメージとは違ったけど、久々に作る蕎麦にワクワクする。
久々だが体が覚えているその作業と香は、脳にドクドクと血を巡らせるようで。
なにこれ楽しい。
早く来てくれないかな?
早くこれを茹でたいんだけど。
とは思ったものの、いつもの時間になっても来る様子がない。
どうしたんだろ…
いつも規則正しい生活してる感じなのに。
そう言えば前にも3ヶ月くらいいない時が………もしかして…
「アレンが来たゾーーーー!!!」
久々に聞いたその声に、厨房がゾワッとざわめく。
そうだ、アレンくんなら以前彼と話をしていたはず。仲悪いから知ってるかは怪しいけど…
「ああ、神田なら任務ですよ。」
「任務?!」
聞いてみればあっさりとそう言われた。
あーやっぱり…彼もエクソシストでしたか。
そりゃ人のこと軽々持ち上げるわけで。
というか私が言うのもあれだけど蕎麦だけで良いの?栄養をもっと……今度はサイドメニューも勝手につけてやる…。
はぁ…とため息をつけばアレンくんが小首を傾げる。
「ああ、ゴメンね。いや、私今日復帰してさ、久々に蕎麦作れるぞ!ってあとは茹でるだけまで準備しちゃったから。」
ちょっと残念。と笑えば、キョトンとした可愛らしい顔がニコッと微笑む。
「ならそれ、僕にください。」
「え?」
アレンくんの注文した品を確認する。
「……食べれるの?」
「余裕です。前に好きなもの作ってくれるって言ったでしょ?あれ、蕎麦でお願いします。」
サラリと笑うこの少年は実は天使か何かなんじゃないだろうか…
茹でられる!人の為に!
それだけでこんなに嬉しいなんて!
「ありがとう!あとで落ち着いたらみたらしも作るね!」と綺麗な白髪をくしゃくしゃと撫でれば、「楽しみにしてます!」と嬉しそうに笑ってくれた。