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そうして君に落ちるまで

第1章 距離感調節中(リンク)









「ん?あぁ、そうだな、すまん。」

「いえ。」


けろりとする2人、そしてそれを全く気に留めない同僚の2人。
彼女が私をファーストネームで呼ぶのは茶化されるのに、上司が彼女の肩を抱き続けるのが問題なしなのは私がおかしいのか?


「じゃあオレらは仕事戻るわ。沙優は片付け手伝ってやれよ。お前、一区切りついてんだろ?」

「えっいんですか?じゃあお言葉に甘えて。」

じゃあ俺もと挙手をする2人を班長が引きずり、ワラワラと退散していく。




その後、全員が取りに来たのを確認すると、彼女はウォーカーと私に、紅茶を淹れるから残りを食べようと提案してきた。



「本当、科学班て距離感破綻してますよね…」

パクパクとブールドネージュを頬張るウォーカーがお茶を淹れる彼女に言うと、黒髪の婦女はピタリと止まる。


「西洋の人ってみんなそうなんじゃないの…?」

「えっ」

「だってみんな結構普通に肩組んだり手繋いだりしてない?」

「手繋いだりはしませんけど…ってまってください沙優さん科学班で手繋いだりするんですか?」

ウォーカーが若干前のめりになり、同じ分だけ彼女が身を引く。

「いや…手は繋がないけど…頭撫でたりさ、良くあるしリナリーにもしてるし普通なのかなって…えっ違うの?」

「えー…び…みょう……いやでもさっきのは…」

「やっぱり?あれは近いよね?」

ウォーカーの話を聞き、少し頬を赤らめる彼女は、自分の価値観がそこまでずれていないことに安堵する。

「ちゃんと言った方がいいですよ。言いにくいなら僕からも言いますから」

「うん、まぁ大丈夫。ありがとう。なんていうか、嫌ではないから。」

慣れないけどね〜と再びカップにお茶が注がれる。
嫌ではないのか…



ブールドネージュは美味しくできてきた。
もちろん彼女の入れてくれた紅茶も。


しかし胸が少しつかえる。



「リンクさん?どうかしました?」

「いえ。何も。」




貴女に言うことは、何も。










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