第10章 言霊
(何って、私は何もしてない。…でも、さっきから男の様子も変だ。)
私は、何が起こっているかわからなかったが、逃げるチャンスだということに気づいた。
きびすを返し、男たちに背を向けて逃げ出そうとした!
"ザクッ"
走ろうとした私は、足首に鋭い痛みを感じると同時に思い切り転んだ。
足を見ると血が流れていた。
どうやら、手裏剣を投げられたらしい。
男たちを見ると、相変わらず追って来れないようだが、手裏剣を構えていた。
(動けないわけじゃないの!?)
私は焦りながら立ち上がろうとするがなかなかうまくいかない。
そうこうしていると、男たちが手裏剣を投げてきた。
(駄目だっ!)
私は恐怖に瞼をぎゅっと閉じた。
"キンッ"
目を閉じた私に痛みはやって来ず、金属同士がぶつかりあう甲高い音が響いた。
「無事かっ!?」
うっすらと瞼を上げると、そこには任務に出ていたはずの父親の姿があった。
『パ、パ…?』
私は、信じられずに呟いた。
「ルミ、もう大丈夫よ!」
突然の父親の登場に驚いていると、後ろから抱き締められた。
『マ、マァ~!』
それが誰の腕か分かった瞬間、私は安堵に泣きそうになりながら母を呼んだ。
母は私を、よしよしと撫でると、父と目配せする。
母は私を抱き上げ、里に向かって走り出した。
あっという間に小さくなっていく父は、三人の忍びを縄で縛り上げていた。