第10章 言霊
2「どこ行くんだ?」
変化したまま逃げようとしていた私は、尻尾を掴まれ、持ち上げられた。
2「残念だったなぁ?俺は関知系だから逃げられねえぜ?」
ボフンと音を立てて私の変化が解ける。
男の目に怯えた赤い瞳が映っていた。
(こんなところで死にたくない!死ぬわけにはいかない!)
私が涙目になると、男が驚いた顔をした。
2「へぇ、完璧に開眼したじゃん。」
そう言った男の目に映る私の瞳には三つ巴が浮かんでいた。
2「せっかく完全に開眼したのに残念だったなぁ?」
男はそう言うと、私を押さえつけて苦無を近付けてきた。
(やだ!怖い、怖い、怖い!)
私は、近づいてくる苦無に怯えて悲鳴を上げた。
『止めてー!』
目を見開き絶叫する。
すると、男の動きが止まった。
(どうして?)
私は不思議に思いながら男を見る。
男は凶悪な顔をしながら何かに押さえられているかのように動きを止めていた。
『は、はなちて!』
私は男の様子に怯えながらもそう言った。
すると男は私を押さえつけていた腕を離す。
あっさりと離した男に驚くが、何故か相手も驚いているように見えた。
3「何をしている!」
私たちの様子を見ていた男の仲間が咎めるように私を離した男に怒鳴る。
そして、すぐに残りの二人が私に近づいてきた。
『こないでっ!』
思わず叫ぶと、二人は同時に足を止めた。
(どうして?)
私は疑問に思って眉間にシワを寄せる。
1「お前、何をした!?」
止まったまま、男が叫んだ。