第40章 父の巻物
『……先生、私……7班になって良かったです!』
私は不意にそんなことを言った。
何故か急に言っておきたくなった。
そろそろ里を離れなければならないと思っているせいかもしれない。
「……オレもルミが7班でよかったよ?」
カカシは両目を線にして笑う。
今日は額宛をしていないせいで、瞑ったままの左目が弓なりになる様子も見ることができた。
左目の傷、それを見た私はカカシの心についているであろう傷を思う。
(……カカシの傷も癒したい……これから失われるはずの命も救いたい……)
私はそこまで考えて、オビトが企てていた月の目計画を思い出す。
理想の世界を幻術で作り出そうとしているオビト……。
(……私も、オビトとやっていること似てるな……
オビトは過去にあった悲劇を無くそうとしていて、私は未来に起こるはずの悲劇を無くそうとしている……)
これは私のエゴだった。
『……先生、もしこれから先私が道を間違えて、他人の存在を否定するような事があったら……先生が道を正してくれませんか?』
私がそう言うとカカシはじっと私を見つめた。
「……そんなことをないと思うけど、まぁ、教え子が道を間違えたら連れ戻して正しい道を教えるのが先生の役目だからね!」
カカシの言葉に、私は微笑んだ。
「……ところでさ、ルミはいつもオレの事、先生って呼ぶじゃない?
それってどうして?」
カカシの問いに私は首をひねった。
「……サクラやナルトはカカシ先生……サスケはカカシだけど……
……でも、ルミってオレの名前呼ばないよね?」
カカシはそう言った。
(気付いてたんだ……)
私がカカシを先生と呼ぶのには理由があった。
(カカシ先生っていうの何か違和感あるんだよね……)
私のなかでカカシは、未だに漫画ナルトの登場人物として見てしまうことがあった。
他の長い間共に過ごした人たちはすでにキャラとしてでなくその人として認識しているのに……。
私は、自分が無意識のうちにカカシに距離を置いていた。
『……そうでしたか? 特に理由はないですよ?』
私はカカシの問いにはそう答えとぼけた。
「……ふーん?」
カカシはそう言ったが納得しているのかは分からなかった。