第39章 雪の国と春
『……見てみろよ……
あんたの兄さん、こんなに綺麗なもの、残してくれたんだぜ?』
私はドトウにそう言って辺りを見回した。
「……そうだな……」
ドトウはそれだけ呟いた。
「……俺は、兄は自分の趣味で金を使い込んでいるのだと思っていた。
……兄を殺して、その財産で雪の国を五大国をもしのぐ国にしてやろうと思っていた……
…………俺は……間違えていたんだな……」
ドトウの頬を一筋涙が伝った。
『……あんたが間違えだと思うならそうなんだろ……
……間違えたなら、やり直せばいいんだよ!』
私はそう言うとニカッと笑う。
ドトウはそんな私を驚いて見ていた。
しばらくして、三太夫がやって来てドトウは連れていかれた。
ドトウは大人しく従っていた。
「……ルミ~」
私は後ろから間延びした声で名前を呼ばれ振り返った。
「……妬けちゃうなぁ~、膝枕なんかしちゃって!」
カカシが、なんの皮肉かそう言って私の隣にしゃがんだ。
「……それにしても、ドトウがんあなこと言うなんてね……」
カカシは私達の話を聞いていたようでそう呟いた。
『……春の力ですね……雪の国の人には私達たより効果絶大なんですよ……きっと……』
私がそう言うと、カカシは首を傾げた。
『……先生、ほんと情緒にかけてますね!
ドトウだってこの春に感動したんですよ!?
先生は何も感じないんですか……?まったくもう!』
私はため息をついた。
「……う~ん、でも今こうして、ルミの隣でこの景色を見れてるのはうれし~いよ?」
カカシはマスク越しの笑顔を私に向けた。
いつも眠そうにしている左目は、今は弧を描いている。
私はそれにはにかんだ笑顔を返した。