第37章 千鳥と螺旋丸
「……っ!
……やっぱりそうだったんだな!何で今まで黙ってた!!」
サスケはそう叫ぶ。
『……うちはルミだと、木ノ葉で安全に過ごせなかったから……』
私の言葉にサスケが唇を噛んだ。
「……イタチのせいか?」
サスケはそう言って目を鋭くする。
本当のことを言えない私は苦笑いするだけだった。
「……ルミ!お前の事は俺が守ってやる!
……だからもう、自分を偽る必要はない!」
サスケの言葉に、私は嬉しいと思うと同時に罪悪感を持つ。
『……そうすれば、サスケは復讐を止めるの?』
私がそう言うと、サスケは目を見開いた。
「……ルミ!……シスイも……お前の父親もイタチに殺されたんだぞ!
憎いとは思わないのか!?」
サスケが驚きと怒りがない交ぜになったように叫ぶ。
『……サスケ……イタチはね、イタチは誰よりも木ノ葉の里と一族、そして平和を愛してた……』
私の言葉にサスケが目を見開いた。
私は、驚いているサスケに、イタチの任務について話していた。
「……そんな、嘘だっ!」
サスケは信じられないようでそう怒鳴る。
『……サスケ、イタチは里よりも一族よりもサスケが大切だったんだよ……
だから、自分を敵に仕立てあげて、復讐という形でサスケの生きる、強くなる目的になったんだと思うよ。』
私がそう言うと、大きく開いたサスケの目に、薄い水の膜が張っていく。
「……どうして……兄さんっ!」
サスケの瞳から一粒の涙がこぼれた。
『……サスケ、まだ間に合うよ……
イタチを木ノ葉の里に連れ戻そう!
イタチが帰ってこられるような里に、サスケがしてあげればいいんだよ!』
私は、サスケを抱きしめながらそう言う。
変化を解いているせいで、サスケを抱きしめているつもりがしがみついているような格好なのはご愛嬌だ。
「……だから、夢が俺を火影にすることだったのか……」
サスケが少し笑いながらそういった。
私は、サスケが自己紹介のときの言葉を覚えていたことに驚いた。
「……ルミ、すこしこのまま……」
サスケは私の背に腕を回すと、肩に額をのせた。
私はじわりと肩が温かく濡れるのを感じながらサスケの大きくなった背中を撫でていた。