第33章 紅い千鳥
「流!」
女は流を見ると、助けを求めるように名前を呼んだ。
「術を失敗して、服だけ置いて来ちゃったってばね!」
女がそう言うと流が苦笑いをした。
(どんな術だよ……)
俺がそんなことを考えていると、いつの間にか前に来ていた流が、俺から女の服を受け取り、女にわたしにいく。
(ってか、流はいいのかよ?)
俺は、自分のときは悲鳴を上げたくせに、流にはあせる様子のない女にイラつく。
(って、何を考えてんだ俺は……)
俺は自分が嫉妬していることに気付き、拳を握った。
「…………ん?」
だが、そこで俺はおかしなことに気付いてしまった。
俺は流ではなく女に嫉妬しているのだ。
(おい、流は男だろう……)
俺は頭を抱えたくなった。
だが、思い返して見ると前兆はあった。
俺は、第2の試験で流が敵の術で女になってから、流の言動がどうしても、空想上の成長したルミと被っていた。
何度も、ルミが生きていたらこんなだったのか?何て流を見ては考えていたのだ。
(でも、アイツはルミじゃない……)
俺は、自分に言い聞かせ、嫉妬による苛立ちを押さえようとしていた。