第29章 運動会と家族
(……そっか、ナルトとサスケも……。)
私は視線の先のナルトとサスケが見ているものに気づいた。
二人は仲良く弁当を囲む家族を見ていた。
『ナルト。』
私はナルトを呼ぶと、隣に腰をおろした。
「なんだってばよ?」
ナルトが家族から視線を私に移す。
その目からは先ほどのどこか寂しそうないろはすでに消えていた。
『ナルト、お前に家族がいたらどうする?』
私は、自分がうちはルミと名乗っていたときにしたことのある質問をぶつけた。
「ちょっと、流!」
サクラが焦ったような声で私の名を口にする。
カ(流は人の傷によく気付くな…)
カカシはそんなことを思いながら、二人の会話に入るべきか考える。
「何でそんなこと?」
ナルトは突然の質問に首をかしげる。
『ん~?』
私はナルトの耳元に口を寄せる。
『お前の妹とあったことあるんだ。』
私はナルトにしか聞こえない程度に囁いた。
「!?」
ナルトは声もでないほど驚いたようで、目を見開いて息を止めた。
「ど、どういうことだっ!?」
ナルトは我に返ると私の襟を握って揺さぶってくる。
「ほーんと、そういう嘘はよかないね?」
いつの間にか隣に来たカカシがにっこりと笑ってそう言った。
(……嘘臭い笑い。)
私は隣に立つカカシを見上げる。
唯一見えている右目が鋭い視線を送ってきた。
『どうして嘘だと思うんですか?』
私はカカシにたずねる。
『生き別れの妹がいたって不思議はないと思いますよ?
……この里は、平和に見えて闇が多い。』
私は後半だけ小声でカカシに言う。
「ナルトの両親はナルトが生まれた日に死んだ。だから、ナルトに妹がいるわけがない。」
カカシは低い声で私にそう言った。
『……ハァ。』
私はなんだか面倒になってため息をつく。
(この話は今度でいいか。)
『ナルトごめん、ちょっとからかうつもりが地雷だったみたいだ。』
私はさっきの言葉が嘘ということにする。
「いいってばよ。」
そう答えたナルトは何時もの元気がなかった。
(上げて落としたような形になっちゃったな。)
私は話しに割り込んで来たカカシをにらんだ。
カカシは何か言いたげに私を見ていたが、運動会の午後の部が始まって私たちも任務を再開した。