第23章 3時のおやつは愛をこめて
「チョロちゃん!チョロちゃんてば!」
可愛い声にハッとしたら、ぷくっと柔らかそうな頬を膨らます小さくなってしまった、僕が恋焦がれる君。
「あぁ、ごめんごめんちょっと思い出してて」
ニコリと笑うと鈴音ちゃんは、もーっと可愛く拗ねる。
「で、どうしてチョロちゃんはお菓子作るようになったの??」
大きな目をキラキラして僕を見つめる。
可愛いなぁなんて思いながら、角の立つ滑らかな生クリームにフワリとラップをかける。
優しくボウルのふちを人差し指で撫でる。
出来上がった生クリームに、ふっと笑みをこぼし鈴音ちゃんを想う。
そう、僕がお菓子を作るようになったのは...
「僕が大好きな子がお菓子を作ってたからだよ」
その一言が、静かに響けば胸が徐々に熱くなる。
顔の体温が上がっていく。
子どもになったとしても、鈴音ちゃんなんだからこんな恥ずかしい告白をしてしまって、体温があがらないはずがない。
言ってしまった恥ずかしさで、何処かへ隠れてしまいたい衝動をおさえながらお菓子へ集中しようとキッチンに目を向ける。
だけどあいにく、生地はオーブンの中、生クリームは出来上がってしまってやることが無い。
「チョロちゃん、好きな子がいるの?」
僕の逃げ道をいともたやすく奪ってしまう、小さな天使。
首を傾げる君は、小さくてそれでいて可愛らしい。
それは無条件に溢れ出る愛おしさ。
鈴音ちゃん自身だからだと考えれば、その想いは倍にそのまた倍に膨れ上がる。
「い、いるよ」
「ふーん、どんな子なの?」
小さくたって女の子だ。
この手の話題に興味深々らしい。
「や、優しい子だよ、とっても...」
「それで!それで?!」
何この、生殺しというかなんというか
好きな子の前で、好きな所を言うとかただの拷問じゃない?
恥ずかしくて死んじゃいそうだよ僕。
それなのに、キラキラと光る瞳が眩しくて抵抗できない。