第14章 祭り囃子と夏の終わりー前編ー
「暑いね!おそ松兄さん!」
しゃくしゃくとレモン味のかき氷を食べる十四松くん。
「暑いなー、十四松」
かき氷をだるそうに食べるおそ松。
味は予想通りいちご味。
「「暑いなー」」
「いやそりゃ暑いわい!」
季節は八月の終わり、うっとうしい蝉の熱烈な求愛もきこえなくなった頃。
八月の終わりというだけあって、真夏よりは涼しいかもしれない。
しかし、この季節は台風やらなんやらの影響で降る雨が残暑とパスタみたいに絡まって胸焼けをおこすほどに蒸し暑い。
たとえを聞いただけで胸焼けを起こしそうだ。
無駄に手の込んだ、松印のかき氷機を回す手を止める。
そもそもこの微妙な暑さの時期に屋敷こと、不思議魔法の家の外でかき氷を食べていること事態が色々と間違っている。
「鈴音ちゃんスッゴい汗ー!」
そういいながら、いつのまにか横に来ていた十四松くんが私のかわりにかき氷機をまわす。
「いやー!でもこんな中の暑さで食べるかき氷サイコー!」
アルミでできたながーいパフェ用のスプーンを青空にむけながら、かーっとおっさんくさい馬鹿松。
真横ではガガガガッ!と危険な音を鳴らすかき氷機。
ばきゃっ!っと音がする。
「壊れちゃった!あっははっ!!!」
どんだけ怪力なんだ十四松くん....
「でも、鈴音ちゃんの分はできたよ!!はいっ!!」
両手で真っ白でさらさらの氷が山盛り盛られた、ガラスの器を渡された。