第9章 メイドは冥土を統べる
銃に指をかける音が静かに響く。
「ひいっ.... 」
私はベルフェゴールの手をとって、ぐっと力をいれて
壁にめり込んだ爪を引っ張り出した。
さっきからぐいぐい引っ張ってたから、なんとか引き抜けたわ。
「.... えっ」
その場にいた全員が同じ言葉を漏らす。
「あのね、殺すとかするわけないじゃん」
その言葉にこちらを振り返るベルフェゴール、ボロボロと涙を流しているのを見ると少し罪悪感が芽生える。
松代さんの事もあるし、仕事を馬鹿にしたような言い方がどうしても許せなかったとはいえ、やり過ぎたわ....
そっとベルフェゴールの頬に流れる涙を人差し指で拭う。
その行動にポカンとするギャラリー達
「ねぇ?これどういう状況なの?」
ポツリと真後ろから声が聞こえた。
静かな部屋に響くのは、いつもは優しい声の持ち主。
「チョロ松くん?」
そしてそのチョロ松くんの真後ろからひょっこりと顔を出したのはトド松くんだ。
「なになに?女の子同士の喧嘩?こっわーい」
ニコニコと笑うトド松くん。
あっこれ多分怒ってるわ....
なんせ目が笑ってない....
しかも二人とも....
「アモン、状況を説明して」
チョロ松くんの言葉に体をびくりとして、口ごもるアモン。
ふうっと一つため息を吐いて、つかつかとチョロ松くんがアモンの元に歩く。
「僕の命令が聞けないの?アモン?」
ジロリとチョロ松くんに見つめられて、カタカタと震えている。
あーヤバイはこれ、相当に怒ってるわ....
でもさ、普通怒るなら私だよね?
なんでこっちに来ないんだろ?