第9章 わたしのこたえ。
『あれ?』
「何?期待してた?」
『嫌…そんなこと…』
「だったらいいじゃない。食べれば。」
目の前には色とりどりのケーキ。
なぜか私は月島くんにケーキバイキングに連れてこられていた。
月島くん曰く、男1人で来れるわけないじゃない?だって。
月島くんの目の前にはいちごのケーキがたくさん。
『月島くん、甘いもの…っていうかベリー系好きだよね…』
「椎名サンはこれでしょ?」
そう言われ、差し出されたのはガラスの器に盛られた白いぷるぷる。
「杏仁豆腐、好きデショ?」
『うん…』
まただ。
『ねえ、なんで私が杏仁豆腐が好きってしってるの?』
そう聞けば、月島くんは私の方を見てさらりと答えた。
「何度も食べてるの見たから…好きなんだと思って。」
『…いつ?』
「初めて契約決まった日とか、仕事がうまくいった日…とか?」
コンビニに売っている赤いパッケージのやつ、食べてなかった?
だから好きなんだと思って。
そう呟いた横顔はすこしだけ照れくさそう。
そんな所まで見ていてくれていたのか…と。
やっぱり昨日、お見舞いに買ってくれていた杏仁豆腐は偶然じゃなかったのか…と。
目が潤みそうになるのを必死で堪える。
『うん。すき。すごく、すき。』
そう答えると月島くんは自分のために持ってきていたショートケーキをぱくり、口にほおばる。
「うん、おいし。」
ペロリと唇をなぞる舌に
ケーキを見て緩む口元に
フォークを持つ指先に
どうしてこんなに私は欲情しているの?
心をときめかせているの?
わからない
わからないよ。