第8章 同期、さんにん。
side月島。
ふらりと入ったバーで独り飲んでいると、いつのまにか横には人。
っていうか見たことのある人。
「何してるんですか…及川さん。」
「あ!バレちゃった?」
てへぺろ☆と舌を出して笑う及川さんを無視し、目の前のカクテルを口に含む。
「それってアプリコットフィズ?」
確かそんな名前だったなと返事をすれば及川さんは含むように笑う。
「なんですか?」
「ああ、カクテル言葉って知ってる?」
訝しげに及川さんを見ると、及川さんは答える。
「花言葉や宝石言葉みたいにカクテルにも意味があるんだよ?」
及川さんは僕の前にあるカクテルを指差した。
「それのカクテル言葉は”振り向いてください”。誰に振り向いて欲しいのかな?」
ニヤリ
隙のない笑顔で笑う及川さんに苛立ちを覚える。
「帰ります。」
そういって立ち上がれば、僕の背中に突き刺さる声。
「早くしないと奪われちゃうよ?かわいいかわいいうさぎちゃん」
僕は振り向いて隙のない笑顔に愛想笑いをする。
「もう、奪われましたよ。百獣の獅子に。」
僕はそのまま入り口向かって歩き出す。
きっと今僕は醜い顔をしているだろう。
嫉妬に狂った
醜い顔を。