第8章 同期、さんにん。
side月島。
昼休み。
食事を終えた僕は、喫煙所に足を進めた。
今の時間は誰もいないのを知っているから。
ぱたり。
扉を閉めれば無音。
僕はスマホを取り出しメッセージアプリを開き、通話ボタンを押そうとして、やめた。
月島:風邪だって?大丈夫?
そう、メッセージを打ち、送る。
ポケットから煙草を取り出すとフィルムを剥がし、1本取り出し口にくわえ、火をつけた。
久しぶりの煙草はやっぱり苦い。
ため息と一緒に白煙がふわりと漂う。
ヴーヴー
スマホが振動し、メッセージアプリに1件のメッセージが現れた。
椎名:帰りに雨に降られちゃって。
明日は仕事行くから大丈夫。
僕はすかさず通話ボタンを押した。
数回コールが鳴り、すぐに声が聞こえた。
『もしもし…?どうしたの?』
「灰羽と付き合うの?」
『な…んで…』
息がつまるような声が聞こえた。
平静を装い話を続ける。
「灰羽に聞いた。おめでとう。」
『…ん。』
「じゃあ、僕との関係も終わりだね。」
そう、唐突に告げれば息を飲む音。
「彼氏がいるのに他の男に抱かれたいの?梢は。」
『違っ…』
「じゃあ終わり。だって意味ないから。こんな関係。」
何も言えず電話口で黙り込む椎名サン。
『…月島くんはそれで、いいの?』
油断していた時に耳に入ってきた言葉。
「っ何が?僕はただの暇つぶし。性欲解消でやってただけ。他の女探せば済むことだよ。」
『じゃあ昨日のは何…?』
「昨日の…って?」
『なんで名前なんて呼ばせたりしたの?』
「ただの気まぐれ。たまにはそういうのもいいなって思ったダケ。」
そう呟けば、電話の向こうからぐずり…と鼻をすするような声。
泣いてる…?
「椎名サ『ごめんなさい。もう仕事以外関わらない。本当にごめんなさい。』
椎名サンは早口でそういうと一方的に電話を切った。
無機質な音が耳に入る。
耳に当てていたスマホを持ちかえ、ポケットに仕舞う。
吸わずに燃えつきそうな煙草を灰皿に押し付け、僕は喫煙所の入り口のドアを開けた。