第7章 梅雨。
電車に乗る気力もなく、自宅までは歩いて帰った。
朝早くてよかった。
すれ違ったのは新聞配達のバイクくらい。
重たい体を引きずるように階段を登り廊下を進めば前から声がした。
「梢…?」
顔を上げれば心配そうな顔をして近づいてくる灰羽くん。
「梢…傘は?っていうかびしゃびしゃ!早く家にっ!」
『はいば…くん…なんで…』
「メッセージ入れても2人とも既読にならないから心配で…今日も仕事あるしさすがに始発で帰ってくるかなって…」
ふらり
体が崩れ落ちる。
「梢っ!」
そんな私の体を濡れるのも構わず灰羽くんは抱きしめた。
止めてきたはずの涙がひとつ、ふたつと雫になり、溢れ出す。
『ふっ…うっ…うわぁぁぁぁぁぁん!』
私は子供みたいに声を上げて泣いた。
そんな私を灰羽くんは泣き止むまで強く抱きしめ優しく背中をさすってくれていた。