第1章 入社式。
「お!やっと来たなー。新人女子!」
黒尾さんに連れられてきたのは会場内のテーブル。
そこにはさっき会った灰羽くん、月島くん、そして髪の毛をツンツンに立てた琥珀色の瞳の人、ふわふわの髪の毛で真面目そうな人がいた。
ちなみにさっきのはツンツンの髪の毛の人が私に向かって言った言葉。
「及川たちに捕まってたわ。」
「及川さんですか…あの人は見境ないですからね。」
「梢ー!」
『灰羽くん。さっきぶり。』
私と灰羽くんがそこそこ親しげに話しているのを見た先輩方。
「あれ?灰羽と椎名さんって大学一緒?初対面だよね?」
真面目そうな先輩が私に話を振ってくれたのに灰羽くんがにぱっと笑ってさっき口止めしたはずのことを喋ろうとしている。
「最寄り駅一緒だったんす!梢すごいんすよ?
駅の階段1段飛ばしで登ってパン『わぁぁぁぁあ!灰羽くんそれ言わない約束!』
口を塞ごうとぴょんぴょん飛ぶ私を見て「あ」という顔をする灰羽くん。
それを見た先輩方…
いや、ツンツンの髪の先輩と黒尾さんがニヤリとする。
「なになにー?」
「なになにー?」
「階段頑張って登ったのー?」
「登った時にどうしたのー?」
『いや…別に…』
ニヤニヤした顔で近づいてくる2人の先輩からじりじりと逃げるも後ろには壁。
逃げられない…
怖くてぎゅっと目を瞑った時、先輩2人の後ろから透き通るような声が聞こえた。
「木兎さん、黒尾さん…悪ふざけはそこまでですよ?
椎名さん困ってます。」
声に反応し、目を開ければ離れていく2人。
「だって新人ちゃんの反応おもしれーんだもん。」
「悪いな。悪ふざけが過ぎた。」
『いえ…』
離れていく2人に安堵しながらも、ふと、2人にちゃんと名前を聞いていないことに気づく。
『あの…』
ツンツンの先輩と真面目そうな先輩に話しかけると、2人は不思議そうになる。
『お名前…教えていただけますか?』
そう聞けば2人は私を見て笑う。
「俺、木兎光太郎!よろしくな?新人ちゃん!」
「俺は赤葦京治です。椎名さんよろしく。」
私も改めて自己紹介。
『よろしくお願いします!』
私はぺこりと頭を下げた。