第5章 ゴールデンウィークの予定は
就業後、すぐに駅に向かう。
今日は私の方が早い。
前回、月島くんが待っていた場所に寄りかかり、待つ。
はぁ…
無意識にため息が出る。
目線も下がる。
「ねえねえお姉さん、1人?俺と食事にでも行かない?」
だから、私に近づいて来る人に気づかなかった。
ナンパ…?
『すいません…待ち合わせしてるので…』
顔を上げると、にこやかな顔が目の前にあった。
あれ?この人知ってる。
入社式で会った…
「美人が台無しだよ?椎名 梢ちゃん?」
綺麗にセットされた茶色い髪の毛。
ふわりと香る香水。
確か…
『おい…かわさん?』
「せいか〜い☆別部署なのに名前覚えてて偉い。」
そういうと及川さんは私の頭を撫でる。
「待ち合わせって彼氏?」
にこにこと笑いながら及川さんは私に話しかけた。
『いえ、同じ部署の人と食事に…』
「誰?」
『同期の人…ですけど。』
なんかすごく尋問されてる…
「へえ…」
『及川さんは何故?職場は反対口でしょう?』
「あー、俺はこれから岩ちゃん達と飲み。こっち口に可愛い子がいる飲み屋があるの。」
『その岩ちゃんさんは?』
「後輩に捕まってる。だから一緒に待ってもいい?」
『まあ…いいですけど…』
ふと、及川さんから目をそらせば周りの女の人達がみんな、及川さんを見ていた。
確かに格好いいもんなぁ。
女性の目を引く人だよね。
ちらりと及川さんを盗み見すれば、なぜか目があう。
「あ!梢ちゃん俺のことみて…『無いですから。』
うん。
見てない見てない。
一刀両断すれば、残念そうな声。
「ねえ、梢ちゃん?俺も、梢ちゃんの彼氏候補に立候補してもいいかな?」
『立候補…って。私を好きな人なんていないですよ。』
そう笑えば、とんと横の壁に長く伸びた手。
なぜ私は、及川さんに壁ドンされているのでしょう。
そんなことを考えていれば端正な顔が私の目の前に近づく。
「いるじゃない。同じ部署に2匹もオオカミが。」
この人、どこまで知ってるの…?
訝しげに及川さんを見れば私の気持ちを知ってか知らずか口元だけを笑みに変えて私を見る。
『何のことかわからないんですが…』
「わかってるくせに…言わせてあげようか?」
及川さんのすらりと長い指が私の顎をとらえた。