第1章 入社式。
ついてくる…
銀髪のお兄さんがついてくる。
目の前は入社式の会場だというのに。
会場に入り、受付で名前を伝えれば名札と小さな白い花。
メガネが似合う美人の受付の女性が言うには花の色が課のメンバーを表しているらしい。
他にはオレンジ、青、赤、ピンク。
どんな人がいるだろう。
そう思いながら隣を見ると、
いた。さっきの銀髪のお兄さん。
ちゃっかり隣で受付してるし。
もらった花は…
白!
ってことは…同じ課なの⁈
びっくりして固まっているとお兄さんは横にいる私の顔を見た。
「あれ?さっきの…」
『あ…はい…』
同じ駅でしたよね。
そう言おうとしたがお兄さんの声に遮られた。
「階段一生懸命登ってた白のパンツの子!」
え?
パンツ?
『見えて…ました?』
「うん!」
にこにこ
にこにこ
「俺、あれで電車間に合った!」
ありがと!と握手され、ハッと我に帰る。
『ちょっと来て!』
なかなかに騒がしい会場内、人のいない端までお兄さんの手を引く。
そして、壁際に追い詰める。
『忘れてください。今朝のこと。』
「…パンツのこと?」
『おっきい声で言わない‼︎』
慌てて口を塞ごうとするが身長差がありすぎて全く届かない。
『恥ずかしいんで周りに言わないでくださいね?』
にこり。
お兄さんは笑うと壁にもたれながらしゃがむ。
「わかった。ねえねえ、名前、教えて?」
『私?私、椎名 梢 今年入社の22歳。お兄さんは?』
「俺、灰羽リエーフ。梢 と一緒で今年入社の22!」
『同い年なんだ。配属される課も一緒だし、よろしく、灰羽くん。』
改めて私から手を差し伸べれば灰羽くんも手を伸ばし、私達は握手を交わした。