第18章 side KEI TSUKISHIMA
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side梢
月島くんを食事に誘う前に、私にはやらなければいけないことがあった。
リエーフくんにお別れを言うこと。
だから私は月島くんに想いを伝えた前の日にアポを取ると、夕方、リエーフくんの家に向かった。
玄関チャイムを鳴らすとすぐに開く扉。
「いらっしゃい。」
『ごめんね?予定空けてもらって。』
「大丈夫。予定なんてなかったし。」
嘘つき。
カレンダーに予定を消した跡がある。
リエーフくんは優しすぎるよ。
『じゃあ、台所借りるね?最後、仕上げしちゃうから。』
そういうと私は持ってきたお鍋に火をかけた。
ご飯を食べに行こうって言ったらリエーフくんは食べに行くより梢のご飯が食べたいって言ってくれた。
だから、今日はおうちで夕飯。
今日のメニューはリエーフくんが前から食べたいって言ってた煮込みハンバーグ。
実は、ちょっと多めに作ったハンバーグと、他にもリエーフくんが好きなおかずをリエーフくんの家に来る前に作っておいた。
それを私は密封容器やファスナー付きの密封袋にあらかじめ入れておき、リエーフくんが台所からいなくなった隙に冷凍庫に入れた。
こんなことで、リエーフくんに許してもらえるなんて思ってないけれど…
「梢!作るのそばで見ててもいい?」
明るい声でそう言われ、私はパッと顔を上げる。
『どうしたの?急に。作ってる姿なんて面白くないよ?』
そう言えば、リエーフくんは私をぎゅっと後ろから抱きしめた。
「梢のこと見てたいんだ。だめ?」
…わかってるんだ。リエーフくん。
きっと。
私は絞り出すようにうん。と言った後、何も言えなくなった。