第18章 side KEI TSUKISHIMA
『月島くんっ!』
強く抱きしめると、僕の腕から逃げ出そうとする梢。
「嫌だ。逃げないで!」
僕から逃げだせないように更に強く抱きしめると、梢は逃げるのを諦めたように体の力を抜いた。
「”あれ”は、僕に向けてでいいの?」
そう聞けば、梢の体がぴくりと跳ねた。
「”振り向いてください”は僕に向けて言ってくれてるの?」
切れた息でそう聞けば、こくり、と梢が縦に頷く。
がだだん、がだだん
遠くから電車が来る音がする。
少しずつ、少しずつ大きくなっていく音。
僕は、電車の音に乗せて、そっと梢の耳に声を吹き込んだ。
「すき」