第18章 side KEI TSUKISHIMA
うそ…でしょ。
スマホを持つ手が震える。
スマホの画面から梢に目を移すと、梢は真っ赤な顔。
「振り向いて…ください……」
誰に
誰が
感じたことのない胸のざわめき。
苦しくて
苦しくて
息をするのももどかしい。
『あ、わ、たし…お会計…先に出るね?』
そう、言って先に部屋から出てしまった梢を僕は追いかけることができなかった。
残されたのはアプリコットフィズ。
”それのカクテル言葉は”振り向いてください”。誰に振り向いて欲しいのかな?”
”早くしないと奪われちゃうよ?かわいいかわいいうさぎちゃん”
かつて僕が及川さんに言われた言葉が頭に響く。
梢が飲み残した目の前のそれを飲み干すと、僕は急いで店から飛び出した。