第18章 side KEI TSUKISHIMA
結局僕は電話が来た後すぐに仙台駅に向かい2日後の新幹線のキャンセル。
そして、明日の新幹線の手配をした。
そして今、新幹線に乗っているってわけ。
家のまばらな景色からどんどん密集していく景色。
色鮮やかな景色がどんどん無機質な色に変化していく。
僕はため息をつくと、ヘッドホンをつけ、1人の世界に向かった。
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駅に降り、荷物を引きホームを進む。
帰省ラッシュの時の人混みがものすごく苦手だ。
何度実家と行き来してもなれない。
梢との待ち合わせは上野駅。
新幹線のホームから改札までエスカレーターで上がれば、梢はもう待ち合わせ場所であるパンダの像の前に着いていた。
袖のないデニム地のシャツワンピースに薄手のベージュのカーディガン。
…偶然だが、今日の僕の服装に酷似していた。
僕の場合はデニム地のシャツにベージュのチノパンだけど…
まあ、しょうがないか。
「椎名サン。」
通路の入り口から声をかければ、梢はこちらを見る。
「待たせちゃったかな。」
『ううん。私が早く来すぎちゃったの。』
そう言ってにこり笑う梢。
そんな彼女のこめかみからはつ…と汗が流れた。
東京の夕方は蒸す。
できれば早めに夕飯を食べるお店に行って涼みたいところだ。
「夕飯、どこで食べる?店決めてる?」
僕がそう聞けば、梢は少し悩んだあと、僕のほうを見て笑う。
『鶯谷の方なんだけど…お魚の美味しい居酒屋があるんだけど…どう?』
「……いいよ。行こうか。」
わかっているのだろうか。
鶯谷は都心有数のラブホ街。
わかってないんだったら本当にタチが悪い。
『じゃあ行こうか。』
僕は電車に乗るため、前を歩く梢の後ろをゆっくりと歩いた。