第18章 side KEI TSUKISHIMA
盆の休みもあと2日で終わろうとしている。
新幹線で南…東京に戻る途中、僕は数日前の電話を思い出した。
夕飯後、実家の居間で兄からの飲みの誘いを断っていた時だった。
不意に震えるスマホ。
兄が僕のスマホを見てにやりと笑う。
「蛍…”椎名 梢”ってだれ?」
「仕事の同期。部屋に行く。」
兄が僕を呼ぶ声がするけれど無視して自室に引っこみ、電話に出た。
「もしもし。椎名サン?」
『あ、月島くん。休み中にごめんね?今大丈夫?』
「…まあ……で、要件は?」
そう聞けば梢は口籠る。
「用事がないなら切るよ。」
ため息まじりに言えば、梢は慌てて要件を話し始めた。
『あのっ!月島くんは…いつ…こっちに帰ってくるのかな…って…』
最初の勢いはどこに行ったのか。
どんどん小さくなっていく声。
「僕の帰る日付知ってどうしたいの。」
そう言えば、梢は小さな声でぽそりと呟いた。
『あの…2人きりで話がしたくて…』
振られるのか、それとも…
わからない。
でも、梢に会いたい。
だから、僕は嘘をついた。
東京に戻るつもりでいた日の前日…
つまり明日の日付を伝えていた。