第17章 side HAIBA LEV
side月島
これでよかったんだ。
遠ざかっていくヒールの音を聞きながら僕はそう呟いた。
靴音が完全に聞こえなくなったのを見計らって僕は鞄からスマホを取り出し1本電話をした。
「あ、でましたか。出たってことは暇なんですね?
暇だったら飲みに連れてってくださいよ。
はい?
あなたの都合なんて関係ないですよ。
振られて傷心中の後輩は飲みに連れていくもんなんじゃないですか?
は?
喧嘩売ってるんですか。
その時間かけてセットしてる髪型後退してハゲればいいんですよ。
はい。
はい。
わかりましたよ。最寄りの駅まで行けばいいんですね。そのくらい行きますよ。
じゃあ今から30分あればそちらにつきますんで…
駅の西口集合でよろしくお願いします。
及川さん。」
僕はいやがらせのように電話をし、段取りを決めた。
電話を切り、静寂に包まれたこの状態で考えるのは、やっぱり梢のこと。
梢はまだ泣いているのだろうか。
泣かせたのは自分。
でも、流れる涙を舐めとって
目尻から溢れそうになる涙にキスをして
小さな体を抱きしめたい。
でも彼女はあいつを選んだ。
「すき…だったよ。」
僕はそう吐き出すと、路地を出てゆっくり駅に向かった。