第17章 side HAIBA LEV
side梢
ケーキを食べ、駅まで歩く。
別れを告げたからか、駅までは2人、何も話さない。
かつ、かつとヒールの音が響く。
と、急に手首を掴まれたと思ったら、月島くんが人の少ない細い路地に走り出す。
『えっ?月島くん⁈』
月島くんは何も言わない。
『待って⁈月島くん‼︎』
どんどん歩く人はいなくなり、細い路地には私のヒールの音だけが響く。
『蛍!』
そう背中に呼びかけると私は石の壁に背中を押し付けられる。
ざりりっ
壁にむき出しの腕が擦れる音がする。
『蛍っ!「梢…」
小さな、ちいさな声。
「最後。名前…呼んで。」
いつも自信満々で弱音なんて吐かないような月島くんの初めての姿。
『蛍…』
そっと背中に手をまわすとぴくりと体を震わせる。
『大好き…だったよ。』
そう呟くと、蛍の手が私の顎を掴む。
そして、触れるだけの優しいキスが降ってきた。
「ここを出て左にまっすぐ行ったら駅前に着くから。
先に行って。」
『蛍…』
「先、行って。」
冷たい蛍の声。
『わかった。
蛍、ありがとう。』
そう言うと、私は路地を抜け出しひたすら駅に向かって歩いた。
メイクが崩れることを気にもしないで泣きながら。