第12章 社員旅行。
仕事中のことだった。
「しっ失礼しましゅ!」
かみっかみ、緊張した面持ちで4階に入ってきたのは仁花ちゃん。
事務の仁花ちゃんがどうしたんだろう。
そう思っていると、仁花ちゃんは私達に資料を渡していく。
「社員旅行、今年は8月頭になりました。
場所は熱海、出欠表は1階エレベーター前に置いておきますので、予定が決まったら書いてください!」
社員旅行…
熱海か…いいな…
温泉に海。
楽しそう。
『仁花ちゃんは行くよね?』
そう聞けば仁花ちゃんは私の方を見てにっこり。
「うん。行くつもり。」
『じゃあ私は参加っと!』
私が参加に丸をつけるとリエーフくんが私の名前を呼ぶ。
「梢!梢!俺も参加!」
『分かったよ、リエーフくん。丸、つけておくね?』
リエーフくんも、丸っと。
『他に参加確定の人いますかー?』
そう聞けば3課は全員手を挙げた。
『全員参加…っと!仁花ちゃん、これ返すね?』
「し…しゃちっ‼︎」
『仁花ちゃん…緊張しすぎ…』
仁花ちゃんの威勢の良い「しゃちっ」で黒尾さんはぶひゃひゃって笑ってるし木兎さんは仁花ちゃんが噛んでしまったことにすら気づかず、なぜ黒尾さんが笑っているのかを赤葦さんに聞いている。
そして、月島くんの方を見れば私の方を見ていたようで、他人が気づかないように、口元を隠しながら
にやり、笑った。