第10章 出張。
「椎名…さん。」
『すいません。お手洗いに行ったらすぐに仕事に戻ります。
この部屋も片付けておきます。』
さっき、この部屋に来る前にとっさにつかんだ自分の鞄。
その中からタオルと飲料水を取り出し、先ほど床にこぼした白濁をきれいに拭き取る。
そのタオルをビニール袋に詰め、部屋を出ようとすると白布さんは私を止める。
『何…ですか?』
「そこを曲がったところ…お手洗いあります。
そっちの方が人にばれませんよ。」
化粧、直さなきゃいけないでしょう。
そう言われ、連れて行かれたのは辺鄙なところにあるお手洗い。
『ありがとう…ございます。』
お礼を言えばやる気のなさそうな目で私を見る。
「別に…昼休み、おわりますよ…」
そういうと、白布さんはさっさとオフィスに戻っていった。
私は鞄に入れていたメイク落としのシートでメイクを落とすことから始めた。