第10章 出張。
オフィスを出て、大通りを出ると前を歩いていた月島くんがぴたりと止まった。
『月島くん?』
「ホテルの予約、ギリギリなんだけど。」
『うそっ!』
新幹線の中で予約をしたホテルはチェックインが確か19時。
『ホテル…どっち?』
地図アプリを出しながら道を進もうとするが、初めての場所だということ、パニックになっているということの2つで地図アプリの方角が分からなくなっていると、上から月島くんが覗いてくる。
「それ、向こう。」
そう呟いた月島くんはホテルの方角を指差す。
「駅前の方デショ?だったらこの通りまっすぐ行って…
伝えるより連れて行ったほうが早い。」
月島くんは私の腕を掴むとすたすたと迷いなく道を歩き始めた。
『あれ?月島くん…地図…』
「いらない。地元だしだいたいわかる。」
『月島くんが東北出身だなんて知らなかった。』
「まあ、言ってないしね?ほら、自分で歩く。」
ずんずん前を進む月島くんを追いかけて数十分。
私達が予約した有名なビジネスホテルが見えてきた。
「ハイ、到着。チェックインするよ。」
『あ、うん。』
そういうと月島くんはさっさとホテルの中に入っていく。
私も遅れないように月島くんの後をついていった。