第10章 出張。
新幹線ではセクハラ三昧。
窓際の私の太腿を何食わぬ顔で撫で回す月島くん。
乱した息を、火照る顔を、誤魔化すのに必死だった。
仙台駅に着けばすぐに仕事モード。
タクシーで宮城支部に向かえばすぐさま仕事。
お昼も念のために買っていた栄養補助食品で凌ぐくらいバタバタと過ぎ去り、区切りがついたのは午後6時をとっくに過ぎたところだった。
『黒尾さんが言ってた通りだったね…』
「うん…昼返上しても定時で終わらないとか…」
「ゴメンネー。うちの会長さんがムチャな仕事取ってきちゃってねー。」
振り返ると赤い髪をツンと立てた、宮城支部の天童さんが私の肩を叩いていた。
『いえ、私達も勉強になりますし。ね?月島くん。』
「まあ、そうデスね?」
私達の前でにやりと笑う天童さんはわざとらしくそうそう!というと私達に向かってこう、告げた。
「これからみんなで飲みに行くけど…行く?」
『あ!じゃあ「申し訳ないのですが、上司に連絡を入れなきゃいけなくて…」
…え?
そんなの聞いてない。
「ヘェー。仕事熱心。じゃあまた明日。」
『お、お疲れ様です。』
「お疲れ様でーす。いくよ、椎名サン。」
『あ、うん。』
私はさっさとオフィスから出ようとする月島くんの後を追うようにオフィスを小走りで出た。