第1章 入社式。
みんな、程よくお酒が回った頃。
『私、パンケーキ頼んでもいいですか?』
「あ、僕も…」
「酒のアテにパンケーキ…お前らすげーな。」
『甘いものは別腹なんです。ね?月島くん。』
「そうデスよ。黒尾さん。」
酔いがまわると饒舌になるらしい月島くん。
甘いものが好きらしく、先ほどからラズベリーミルクのカクテルを飲んでいる。
「俺にも一口ずつちょうだい?」
灰羽くんはやっぱり苦いのはダメみたい。
ピーチフィズ片手にがっつり丼物を頼んで食べているのに、私達にパンケーキを一口ずつねだる有様だ。
「お前ら遠慮ねーな。安い店にして本当によかったぜ。」
「だなー!」
「ですね。」
そう笑いながら言う先輩方。
黒尾さんはコークハイ、木兎さんは芋焼酎のロック、赤葦さんは赤ワインを飲む。
最初に頼んだ串物やおつまみはほとんどなくなり、あとは私と月島くんのパンケーキが来るだけだ。
「なあなあ梢本当に酒飲めねーの?」
『灰羽くん。私、飲んだことないの。だから、さすがに迷惑になるし…』
「じゃあカルーアミルクは?ほとんどアルコール入ってないし。ジュースみたいだよ?」
なぜかぐいぐい押してくる灰羽くん。
『じゃあ…少しだけだよ?』
そういえば、灰羽くんはすぐにカルーアミルクを注文する。
「同期と食事行ったり酒飲んだりしたいんだよねー。」
そう言ってにこにこと笑う灰羽くんにしょうがないなと笑う私。
「お待たせしましたー!パンケーキ、チョコとメープル、カルーアミルクの3点です!」
店員さんが運んできてくれた注文したものたち。
メープルがたっぷりかかったパンケーキを切り分け、まずは灰羽くん。
『はい、あーん?』
口に入れてあげれば緩む口元。
「やべーうまいっ!」
今度は月島くん。
『月島くんも、口開けて?』
月島くんも素直に口を開け、ぱくりとパンケーキを食べる。
「ん…美味しい。」
私も生クリームをたっぷりつけてぱくりとパンケーキを頬張る。
とろける生クリーム、メープルの甘さがたまらない。
「幸せそ。」
机を挟んでその様子を見ていた黒尾さんが呟いた。
「じゃあ梢はい!」
目の前に差し出されたカルーアミルクを口に含むと…
『美味しい。』
甘めのコーヒーのようで、結局私はパンケーキと一緒にグラス内のカルーアミルクを全て飲み干した。