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BLEACH お題消化1

第1章 一、初空



「寒い」
 綿入れの上に外套を着込み,悟お手製の襟巻と帽子まで付けた満流が,それでもまだ背中を丸めて鼻を赤くしている。小さくくしゃみをしたあとに,ずび,と洟をすすった。
「初日の出を見ようって言ったの,隊長じゃないですか。手袋はどうしたんですか」
「忘れた……僕じゃないよ。蓮ちゃんが正月っぽいこと全部やろうって言ったから」
「蓮は寝てますよ」
「そうだけど」
 双極の丘に立って,満流と悟は東の空を見ている。白み始めた空。雲は薄くたなびき,今にも昇ろうとする日の光を返してわずかに輝き始めている。
「今日はいい天気ですね。今年は初日の出,綺麗に見えますよ」
「そうだねえ」
 西の空は未だ薄暗い。淡い藍色がじわじわと西の地平へ追いやられていく。
「悟くん,今年の目標は?」
「目標ですか。そうですね……」
 外套に,襟巻と手袋を付けただけの悟が,顎に手を当てて考える。
「色々ありますけど。新しい料理に挑戦したいとか,残業を減らしたいとか」
 強く,なりたいとか。
 死なせたくない,とか。
 隣で欠伸を堪えるこの人を。
「隊長はどうです?」
 隣を見遣ると,水に溶かしたような暗い青を背に,満流は笑っていた。
「家内安全」
「家内って……隊長一人暮らしじゃないですか」
「ふふ,僕の家族はみんなだよ」
 みんな。
 隊のみんなのことだろうか。
 瀞霊廷のみんなのことだろうか。
 尺魂界のみんなのことだろうか。
 何にも執着しないこの人は。
 すべてを諦めてしまったこの人は。
 ようやく諦めないことを思い出したこの人は。
「みんなが健康で,強くて,元気でありますように」
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