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BLEACH お題消化1

第7章 十四、薫風


 もう何を言っても満流は動こうとしない。剣八は溜息を吐いて刀を納めると、少し離れたところにある植え込みへ向かった。今はツツジが盛りを迎えている。剣八は躑躅色の花を二つ手に取ると、そのうちの一つの蜜を、更木にいたときの名残でなんとなく吸ってみた。
「おい満流、あんまり甘くねぇぞこれ」
「別に吸うんじゃないからいいよ……ありがとう」
 満流の手に花を載せると、白い指先にその色が一層映えた。ほんの少し血を連想させるような、しかしそこまで紅くはない華やかな色。満流はその萼を丁寧に花冠に埋め込んだ。
「よし完成。はいやちるちゃん、どうぞ」
「わーい!満流ちゃんありがとう!」
 明るい緑と躑躅色は、やちるの桃色の髪によく似合った。
「ちなみに全部四つ葉です!」
「すごい満流ちゃん!」
 にひ、と笑う満流を見て、剣八は再び斬魄刀に手をかけた。
「よし終わったな。じゃあやるぞ」
「やらないって。そんなにやりあいたいなら“やちる”にでも頼みなよ」
「無理に決まってんだろ」
「僕も無理ー。ほらこんなにいい風が吹いているんだからさ、剣八もちょっとゆっくりしようよ」
 そう言った瞬間、爽やかな南風が三人の間を吹き抜けた。先ほどの手合せでかいた汗が、すっと引いていく。
「いい季節だね」
「……」
「そこは特にそう思わなくても、そうだなくらい言おうよ」
「そうだな」
 りん、と剣八の鈴が風に揺らされる。三人は、何とはなしに風の行く末を見送った。

「よし、そろそろ手合せだな」
「君、そればっかりか」



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