第7章 十四、薫風
「おい満流、ヤらせろ」
「やだー剣ちゃん、真昼間から不潔ー」
「そっちの意味じゃねえ!斬らせろっつってんだ!」
「やだやだ剣ちゃんは物騒で。ねーやちるちゃん?」
「いつものことだよ?」
「確かに」
練武場の裏には、草木の美しい広場がある。満流は草の上で寝ころびながら、シロツメクサの葉で花冠を編んでいた。その横では抜身の斬魄刀を手にした剣八が、苛立った声を上げている。
「大体さっき手合せしたじゃない、練武場で」
「あんなので満足できるか」
斬り合いですら無ぇ、とぶつぶつ文句を言っている。
満流と剣八は、ひとしきり汗を流してきたばかりだった。竹刀を使って、練武場を壊さないように。剣八に軍配が挙がったとはいえ、手加減をされているのが見え見えの状態で。剣八にとっては生温い児戯にも等しく、フラストレーションが溜まる一方だったのも当然だ。
「僕疲れちゃった。もう剣八じゃなくてやちるちゃんの相手するもん」
「そうだよ!剣ちゃんばっかり遊んでもらってずるい!」
「遊んで、ってなあ……」
「一緒に遊ぶって約束したもんねーやちるちゃん。そうだ剣八、そこのツツジ持ってきてよ」
「株ごとか」
「一輪でいいよ……」